音楽スタジオの防音レベルを上げるためにできることのまとめ。
前回までで、音楽スタジオの作り方自体は完結している。今回は、さらに防音レベルを上げることに費用をかけられる人のための内容になる。簡易防音室ではなく、本格的な音楽スタジオを作りたい人向けだ。
本格的な音楽スタジオを作るなら、すべてをDIYにするのではなく基礎の部分を専門業者さんに依頼することを検討しよう。
音楽スタジオの防音レベルを上げるポイント
- 音楽スタジオのすき間をなくす
- 距離が遠くなれば音は低減されることを知っておく
- 重量が音の遮音に影響することを知っておく
- 防音は遮音と吸音の2つの対策が必要だと知っておく
- どのレベルの防音をするかによっては基礎工事を業者に依頼する
専門業者に遮音をお願いする費用は、自作しているときの比ではないが防音レベルは格段に上がる。
求める防音レベルと、かけられる予算は人それぞれだが、防音レベルの高い音楽スタジオを作るなら自作では限界があると知っておこう。
今回は、音楽スタジオの防音レベルを上げるために、僕がどのようなプライベートスタジオを作っているのかを紹介しておく。
音楽スタジオの防音レベルを上げる以前に作る場所を考えること
音楽スタジオの防音レベルを上げるときは、物理的な距離を確保することを意識してみよう。
距離を確保することができれば、ほとんどの音の問題は解消する。音楽スタジオは、作る場所と環境が重要とも言える。
音楽スタジオの防音レベルを上げることを考えたとき、最初の40db(デシベル)をカットすることと、さらに40db(デシベル)をカットすることは同じようで全く違う。実際、遮音シートを何枚重ねたところで、重ねる枚数に比例して音の軽減はできないのだ。
ちょっと歌を歌ったり、ピアノを弾くときの防音レベルなら35db(デシベル)もカットできれば十分だが、本格的な音楽スタジオを作る(65db~90dbカット)ときの費用は、35db(デシベル)をカットしたときの倍の費用では対策できない。
50db(デシベル)以上カットしたい場合は、根本的に防音レベルを上げるよりも距離を確保した方が安くすむことが多いのだ。そうは言っても、都会であれば広い土地を買うことは容易ではないだろう。
音楽スタジオの防音レベルを上げるときには、工事の依頼をする前に音楽スタジオを作る場所を考えてみるのもひとつの対策だと覚えておこう。
音楽スタジオを広い敷地の中心に作る
広い敷地の真ん中に音楽スタジオを建築すれば防音レベルを上げなくても音漏れの心配はなくなる。
もちろん、音楽スタジオを作りたい誰もが広大な敷地を買えるわけではないので現実的には難しい。少なくても密集している住宅地ではなく、隣の家との距離を確保できる場所や角地などを狙ってみることで音の問題を軽減できる。
音楽スタジオを地下に作る
音楽スタジオで防音レベルを上げるためには、地下に音楽スタジオを作る方法がある。
地下に作ることで防音レベルを上げられるのだから検討してみる余地はある。ただし、どの地区でも地下に音楽スタジオを作れるわけではない。地盤が弱い地区の場合は、地下室を作ることができないので不動産屋に相談してみよう。
音楽スタジオを鉄筋の建物に作る
木造と鉄筋では防音レベルが違うので、鉄筋の建物に音楽スタジオを作るのも防音レベルを上げる方法のひとつだ。
たとえば、木造アパートの一室と鉄筋コンクリートのマンションなら、マンションの方が防音レベルが高い。同じ鉄筋コンクリートのマンションでも、賃貸と分譲なら分譲マンションの方が防音レベルが高いことが多い。
注意したいのは、マンションよりも一戸建ての方が防音環境がいいとは限らないことだ。密集地にある木造戸建てなら、鉄筋のマンションの方が防音レベルが高いこともある。
もちろん、マンションの場合は、下の階に対し床からの音漏れの心配があることと、角部屋でないと対策しにくいのでどちらがいいとは一概には言えないのが難しいところ。
音楽スタジオを周囲が騒がしい場所に作る
音楽スタジオを静かな場所に作るよりも、常に騒がしい場所に作ることで音漏れが気にならなくなる。
音楽スタジオは、外に音が漏れないだけではなく外からの音を遮断できることが大事になるので、外が騒がしい場所に音楽スタジオを作って、外の音が聴こえてくるなら完全な防音対策とは言えない。
外から入ってくる音を遮断できるなら、高速道路や線路の近く、繁華街などを狙ってみると、外への音漏れ対策費用を抑えられる可能性がある。
ただし、外部の音を遮断することができなければ騒音に悩むことになる上に、音楽スタジオどころではなくなるので注意が必要だ。もちろん、送電塔の近くだけは避けておきたい。
音楽スタジオの防音レベルを上げる3つの対策
- 鉛入りの壁にする
- 防音ドアにする
- 二重窓にする
業者に依頼して音楽スタジオの防音レベルを上げる3つの具体的な方法を紹介する。
実際に、僕の音楽スタジオでは3つの防音対策をすることで、敷地の外には音が漏れないように音楽スタジオを仕上げることができた。
対策1:鉛入りの壁にする
音楽スタジオを作るときに、壁を鉛入りにしておくことである程度の防音レベルは確保できる。
できるだけ重く分厚い壁にしておくことは基本の対策になる。防音対策が甘い部分から音は漏れる。一部屋を音楽スタジオにする場合は、外への音漏れを軽減することに注力し、家の中に音を返すようにすることも対策のひとつになる。
音漏れ対策の基本は、できるだけすき間を作らないことだと考えておこう。
対策2:防音ドアにする
音楽スタジオの防音レベルを上げるときには、防音ドアにすることも忘れてはならない対策だ。
もし、ドアを交換することが難しいなら、ドアのすき間を埋めるように改造しよう。防音ドアは、昔の音楽スタジオのような仰々しいものばかりではないので、他の部屋の雰囲気との相性を考えて選ぶようにしよう。
家の中への音漏れがひどい場合は、ドアを二重ドアにすることも検討してみよう。
対策3:二重窓にする
音楽スタジオの防音レベルを上げるときには、窓の対策もしておくことが重要になる。
窓を二重窓に変更することで、防音レベルを上げると同時に断熱効果もあるのでぜひ対策しておこう。
マンションやアパートの場合は、床と天井の防音対策をしておこう。
<床の対策>
集合住宅は、下の階への音漏れ対策が必要になる。一戸建ての場合でも、2階以上に音楽スタジオを作るときは床の防音対策をしておきたい(一戸建てならスタジオは1階に作るのが理想)。
簡単にできる対策は防音マットを敷くこと>>ピアリビング静床プレミア防音マット
<天井の対策>
音楽スタジオの防音レベルを上げるときに天井の対策は忘れがち。
部屋全面を防音するのが基本にはなるので、天井を対策することで防音レベルを上げることができる。ただし、天井への防音工事は専門業者に依頼するようにしよう。
DIYで施工した場合、天井から遮音シートなど重量物が落ちてくる可能性もあるので危険だ。必ず、専門業者に相談して、自分ひとりでやらないようにしよう。
音楽スタジオの防音レベルを上げるためにすき間をなくしていこう
音楽スタジオの防音レベルを上げることにあまり費用をかけずに追加対策をしたい場合は、すき間を埋めることを意識してみよう。
ドアのすき間を埋める、窓の隙間を埋めるなど、すき間を埋めていくことで防音レベルを上げることができる。
ただし、吸気口をすべてふさいでしまうような防音対策は危険なのでしてはいけない。空気を循環させるようにしておくことが重要だ。
防音レベルを上げ密閉することで断熱効果が上がるので、音楽スタジオには必ずエアコンを取り付けることも忘れないようにしたい。
防音は音をゼロにするのではなく音を低減するものと考えておこう
防音は音漏れをゼロにするというよりは、防音レベルを高めることだと考えておこう。
どれだけ防音レベルが上がっても、音楽スタジオが全く快適な空間でなければ、音楽スタジオで過ごす時間は短くなる。あなたが音楽スタジオを使うために作るのであれば、毎日使いたくなるような音楽スタジオを作ることを目標にしておこう。
歌声や管楽器の音漏れを低減したいときには、防音室の中に簡易防音室をはめ込んでしまう方法がある。
簡易防音室を検討するときの注意点は、安価なものに飛びつかないこと。
簡易防音室は、軽い材料で作られた安価なものも発売されている。防音の基本が距離と重量であることからも、個人的にはおすすめしない。
もし、簡易防音室を検討するなら、YAMAHAとKAWAIの製品が有名なのでチェックしてみよう。
音楽スタジオの防音レベルを上げるまとめ
音楽スタジオの防音レベルを上げることを追求した場合は、やはり専門業者に依頼することになる。
僕は、専門業者が施工した防音室の防音レベルをさらに上げるためにプライベートスタジオ作りに挑戦したが、鉛入りで1m近い分厚い壁と防音ドアや二重窓などがあっての今の防音レベルであることを補足しておきたい。
もちろん、音楽スタジオの作り方を実践したDIYの防音工事のおかげで、少なくとも敷地外への音漏れはほぼ0になった。
どれだけ大きな声を出しても外まで聴こえないレベルまで防音レベルを上げられたのだから、音楽スタジオの作り方を実践するだけである程度の防音レベルまで高めることができると考えている。
音楽スタジオの防音レベルを上げるポイント
- 音楽スタジオのすき間をなくす
- 距離が遠くなれば音は低減されることを知っておく
- 重量が音の遮音に影響することを知っておく
- 防音は遮音と吸音の2つの対策が必要だと知っておく
- どのレベルの防音をするかによっては基礎工事を業者に依頼する
僕自身、初めてのDIYが音楽スタジオ作りだったのでかなり手間取った。
でも、音楽スタジオ作りに挑戦してみて、時間とお金をかけただけの価値はあったと思う。誰でもできる音楽スタジオの作り方を紹介したと思うので、音楽スタジオを作るのが夢だという人はぜひ音楽スタジオ作りに挑戦してみてほしい。