「今のマイクでは、自分の声が演奏に埋もれてしまう」 「SHUREのSM58から卒業して、もっと解像度の高いマイクを手に入れたい」
マイク選びは、自分の「声」という武器を使いこなすために重要な機材。どのマイクを選ぶかで、歌声の完成度が変わる。
ダイナミックマイクのゴールのひとつは、ドイツの名門・ゼンハイザーの「Evolution 900シリーズ」。
とくに、「e945」と「e935」の2機種は、ダイナミックマイクの常識をくつがえす高音質で、プロからも絶大な信頼を得ている。
見た目がそっくりな2つのダイナミックマイク。「自分にはどちらが合うのか」を判断するために、ゼンハイザーe945とe935を徹底比較したので、購入前の参考にしてみてほしい。
【決定版】ゼンハイザー e945 vs e935 徹底比較表
| 比較項目 | SENNHEISER e945 (1位) | SENNHEISER e935 |
| 商品イメージ |  |  |
| 指向性（音の拾い方） | 超単一指向性 （特定の音以外をバッサリ切り捨てる、超集中モード） | 単一指向性 （正面の音をハート型に拾う、扱いやすいスタンダードな特性） |
| 音質の傾向 | 圧倒的な抜け・明瞭・モダン | ナチュラル・温かみ・マイルド |
| 高音域の特性 | 非常にするどく つややかに伸びる | 適度なきらめきがあり 耳に優しい |
| 中低域の特性 | タイトに引き締まっている | 厚みがあり、ふくよか |
| ハウリング耐性 | 最強クラス （側面からの音を遮断） | 非常に高い （標準的配置に強い） |
| ノイズ遮断力 | 極めて高い （周囲の雑音を拾わない） | 高い （平均的な水準） |
| マイクワーク | シビア （正面をキープする必要あり） | 柔軟 （多少動いても音を拾う） |
| 得意なジャンル | ポップス アニソン メタル 繊細なバラード | ロック ジャズ 弾き語り ブルース |
| おすすめ用途 | 配信 宅録 騒がしいステージ | ライブパフォーマンス 練習用 |
| 価格帯（目安） | 約22,000円 | 約19,000円 |
| 一言で言うと | 主役の声を 際立たせるマイク | 自然な響きで 歌い手を選ばないマイク |
| 購入はこちら>> | e945を購入する | e935を購入する |
ゼンハイザーe945とe935を比較してみると、コンデンサーマイクに近いのがe945。e945は正面以外からの音を遮断するが、e935はカラオケマイクのようにマイク正面以外からの音を拾う。
同じゼンハイザーの900シリーズで、見た目もほとんど同じだが、マイクの特性が違うので、あなたに合うマイクを選ぶことが大切だ。
比較表をくわしく解説するので、実際の使用感にどう影響するのかを確認してマイク選びの参考にしてほしい。
指向性（音の拾い方）
マイクが音を拾う「角度」の違いは、歌うときの快適さに影響する重要なポイント。あなたの歌い方の癖によっては、マイクの性能を活かしきれないこともあるので、注意が必要になる。
e945の音の拾い方｜狙った音を逃さない「レーザー」
ゼンハイザーe945は、マイク正面の極めて狭い範囲に感度を集中させている。
いい部分では、横からの雑音を拾いにくいので、録音には適したダイナミックマイク。とくに宅禄をする場合、別室の生活音などを遠ざけてくれるので、防音環境が整っていない場合におすすめ。
まさに「自分の声だけ」をスポットライトで照らし出すような感覚のマイク。
e935の音の拾い方｜動きを許容する「スポットライト」
ゼンハイザーe935は、e945よりも音を拾う範囲が広いため、歌唱中に感情が高まって少し首を振ったり、マイクスタンドの前で動いたりしても、音量が急激に下がることがないのが魅力だ。
私は、ポケカラではe935を使用しているのは、カラオケを楽しむ感覚なので、マイクの真正面で姿勢よく歌わず、ライブのようにうろうろして歌うことがあるから。
楽しく歌いたいなら、音を広範囲で拾ってくれるe935を選ぶのがおすすめ。
音質
音質は、ボーカルを圧倒的な主役にするのがe945、バンドの中の主役にするのがe935。カタログのスペック以上に、耳に届く声のキャラクターの差は大きいので、ボーカルの立ち位置に対する考え方も決め手の一つになる。
e945の音質｜圧倒的な主役感を放つ「現代の音」
ゼンハイザーe945は、 ボーカルを圧倒的な主役にするための音作りに向いている。
高音域がクリアに強調されるので、高音域にインパクトがある最新のポップスやアニソン、ボカロ曲などの音数が多い音楽でも声が埋もれにくいのが強み。
圧倒的な強みは、歌った後の複雑な編集（EQ調整）をしなくても、歌を録った瞬間に「音楽の上に声がスッと乗る」ことだ。
現代的な高解像度なサウンドを求めるなら、声の抜けの良さはマイク選びのポイントになる。
e935の音質｜情緒豊かで聴き疲れしない「伝統の音」
ゼンハイザーe935の音質は、どこかなつかしく耳になじむ音楽的な質感がある。
1970〜80年代のロック、ブルース、ジャズなどのジャンルと相性が良く、感情を前面に出すジャンルにおいてe935に強みがある。
刺さるような高音を抑え、聴き手に安心感を与えるサウンドは、空気感や楽曲との一体感を重視するシンガーにおすすめ。
高音域の特性
高音域の特性は、歌うジャンルによっては重要なポイントになる。
ボーカルとして、高音域の表現にこだわる場合はe945だが、一体感を重視する場合には、高音域をマイルドに調整するe935を選ぶのがおすすめ。
e945の高音域｜クリスタルのように透明感がある
ゼンハイザーe945は、高音域の解像度が高い。
声の響きは、クリスタルのように透明。とくに、女性ボーカルの繊細なハイトーンや、最近の楽曲に多い男性ボーカルの突き抜けるようなハイトーンボイスをうまく拾ってくれるのが魅力。
息遣いにもツヤが乗り、聴き手の耳元で歌っているかのような臨場感を与えられる。自分の声に「華やかさ」や「プロらしい輝き」を持たせたいならe945を選ぼう。
e935の高音域｜耳に心地よくなじむ
ゼンハイザーe935は、高音域が適度におさえられることで、きらびやかでありながらも、角が立たないのが魅力だ。
あなたの声質が鋭く、さ行の音が刺さりやすい場合は、e935を選ぼう。不快な高音が強調されにくいので、あなたの声が聴き手の耳に心地よくなじむ。
どんな楽曲でも耳に優しく、それでいて埋もれない程度の絶妙なきらめきがあるのがe935の強みだ。
中低域の特性
ダイナミックマイクの中低域の特性は、歌声の説得力やクリアさにつながるため、求める声質に影響する。
高音域のサビではなく、AメロやBメロなどの声に力強さを求めるか、厚みを求めるかでマイク選びは変わってくる。
e945の中低域の特性｜芯のある力強い声
ゼンハイザーe945は、低域をあえてタイトに引き締めることで、不要な膨らみを徹底的にカットしている。
とくに、男性ボーカルにありがちな「ボワボワとしたこもり」を解消し、声の芯がハッキリと浮かび上がるのが魅力だ。
声の輪郭をはっきりさせる「男らしく力強い中低域」を求めるなら、音がにごらないe945を選ぼう。
e935の中低域の特性｜ふくよかな厚みのある声
ゼンハイザーe935は、低域にしっかりとした厚みをもたせてくれるため、声全体を優しく包み込む質感がある。
もし、自分の声が細くスカスカだと感じているなら、e935は不足している低域の声の厚みを補ってくれる。
「良い声」と言われる声の厚みを増してくれることで、声質に自信を持てるのが一番の魅力だ。
ハウリング耐性
ライブハウスやリハーサルスタジオなど、大音量のスピーカーが近い距離になる環境では、不快な「キーン」というハウリングが起こりやすい。
とくに、ライブパフォーマンスでは、ハウリングは最大の敵と言える。
e945のハウリング耐性｜圧倒的な強み
ゼンハイザーのe945は、ハウリング耐性が圧倒的な強みの一つ。
大音量のスピーカーが近くにある環境でも、側面からの音を「見えない壁」があるように遮断する特性があるため、ハウリングのリスクを極限まで下げることができる。
ボーカルのボリュームを限界まで攻めることができ、爆音の楽器人にも負けない圧倒的な音圧で声を届けられるのが魅力だ。
e935のハウリング耐性｜一般的なダイナミックマイクより高い耐性
ゼンハイザーe935は、一般的なダイナミックマイクよりはハウリング耐性があるものの、広範囲で音を拾うため、モニタースピーカーの配置には注意が必要だ。
音響設備の整った大きなステージであれば問題はないものの、スピーカーとの距離が近い環境の場合、ハウリングが起こることがある。
たとえば、宅禄の防音環境の場合は、機材の配置によってはハウリングが起こることがある。私自身、自宅の録音環境では、配置によってハウリングが起こることを体験している。
ハウリングが心配な環境で歌う場合は、e945を選んでおくほうが無難だ。
ノイズ遮断力
静かなスタジオのような環境がある場合は、ノイズ遮断力の影響は少ないが、もし、防音設備のない自宅からライブ配信をする場合は、遮音性は音質以上に重要なポイントになる。
e945のノイズ遮断力｜究極の遮断性能
ゼンハイザーe945のノイズ遮断性能は、圧倒的な強みの一つ。
e945は、マイク正面の狭い範囲以外の音を徹底的に排除する特性があるため、エアコンの動作音のような生活環境音を驚くほど遠ざけてくれる。
防音設備を整えなくても、e945はノイズの遮断を数千円の差で手に入れることができるのが魅力だ。
ライブ配信で歌を披露するなら、生活音に悩まされることなく、リスナーに自分の声だけを届けることができる。
e935のノイズ遮断力｜静かな環境であれば問題ない
ゼンハイザーe935は、一般的なダイナミックマイクと比較すれば、十分にノイズを遮断してくれる。ただし、周囲の生活音をわずかに拾いやすい傾向にある。
たとえば、雑談のライブ配信をするときに、e935を使用した場合、リスナーには雑音は聞こえていないことは確認できた。
たとえば、線路の近くや大通りの近くの場合は、e945を選んでおく方が無難。
マイクワーク
マイクワークは、あなたの歌い方に影響するため重要なマイク選びのポイントの一つ。
あなたが、姿勢よくマイクを一定の位置で歌えるならe945、歌うときにマイクとの距離を一定に保ちにくい場合はe935を選ぼう。
e945のマイクワーク｜マイクとの距離はシビアなプロ仕様
ゼンハイザーe945は、良くも悪くもプロ仕様。
音を拾う範囲が狭いため、つねにマイクの正面に立ち、マイクとの距離を意識して歌う技術が必要になる。口元がそれれば、音質や音量に影響するためごまかしがきかない。
よく言えば、マイクワークを意識して歌うボーカリストの基本を徹底させる練習になる。マイクワークをプロレベルに引き上げるためにストイックに技術を磨きたい場合には、e945は性能を発揮してくれる。
e935のマイクワーク｜マイクパフォーマンスにも柔軟に対応できる
ゼンハイザーe935は、マイクスタンドから多少距離を置いたり顔の角度を変えても、安定して声を拾ってくれるのが強みだ。
ライブのように激しく動きながら歌う場合や楽器を演奏しながら歌う場合は、e935がおすすめ。
感情のままに表現したいパフォーマーにとって、マイクとの距離や角度がシビアすぎないe935は、最高のパートナーになる。
得意なジャンル
あなたの音楽スタイルによって、必要なマイクは変わる。
現代の音数が多く高音域を重視するならe945、バンドのような一体感のあるサウンドを重視するならe935に強みがある。
e945の得意なジャンル｜音数の多いデジタルサウンドや高音域に強い
ゼンハイザーe945は、太い声よりも細くても高音域に強い現代のポップスやアニソン、ボカロ楽曲は、非常に音数が多い楽曲に強みがある。
ボーカルを埋もれさせてしまいやすい現代の楽曲には、圧倒的な解像度をもつe945がおすすめ。最新のトレンドを追い、デジタル環境での鮮明なミックスを完成させたいならe945を選ぼう。
e935の得意なジャンル｜音の空気感や一体感を求める楽曲に強い
ゼンハイザーe935は、ギターの弾き語り、ジャズ、クラシックなロックなど、音の「間」や空気感を大切にするジャンルに強い。
デジタルな鋭さよりも、人間味のある温かさや、楽器と歌声が溶け合うような調和を重視する音楽との相性が良い。
正統派な音楽表現を好み、聴き手の心にじっくりと歌声を浸透させることができるのが魅力だ。
価格
マイクを選ぶときに、価格は重要な決め手になる。
e945とe935の価格差は、数千円ではあるものの、差額に見合う価値があるかは、あなたのマイクを使う用途による。
今までの解説の通り、高いからe945が絶対に良いというわけではない。あなたに合うマイクを選ぶことが大切だ。
e945の価格｜安くはないがプロ仕様のクリアな音が手に入る
e945の価格は約22,000円。数あるダイナミックマイクの中では決して安いとは言えない。e935と比較しても数千円の価格差がある。
ただし、価格に見合う価値はある。
周囲の雑音を拾わずクリアな高音域を実現できる魅力は、価格に見合う性能と言える。
e935の価格｜プロが愛用する900シリーズが2万円以下で手に入る
e935の価格は約18,000円。世界中のプロが愛用するゼンハイザーの900シリーズのクオリティが2万円を切る価格で手に入るのは、圧倒的なコストパフォーマンスと言える。
限られた予算の中で、最大限の音質向上を狙うなら、e935はお買い得感のあるダイナミックマイク。
たとえば、e945のマイクとの価格差の数千円を、マイクケーブルや周辺機器に使うことで音質を上げることもできる。
e935は妥協のマイクではない。広範囲の音を拾ってくれることで、あなたの声に深みを持たせることができる上に、声を安定して拾ってくれるため、はじめてダイナミックマイクを買うときには、e935を買うのがおすすめ。
【まとめ】ゼンハイザーe945｜圧倒的な抜けと遮音性
今回は、世界中のプロが愛用しているゼンハイザーのe945とe935を比較した。価格差は数千円だが、価格だけで選ぶのではなく、あなたに合うマイクを選ぶことが大切だ。
現代の高音域に強みのある楽曲やデジタルサウンドを歌うならe945、感情表現やバンドサウンドのような一体感を求めるならe935を選ぶのがおすすめ。
あなたの声が持つ本来の輝きを引き出すことができるダイナミックマイクを選ぼう。